この記事では、オペラント条件づけの意味を分かりやすく紹介します。オペラント条件付けの強化・弱化の関係を表で解説するほか、日常で使える活用方法や類似の条件づけとの違いも詳しく説明しますので、自分や周囲の人の行動を変えたい人はぜひ参考にしてみてください。
オペラント条件付けとは?
オペラント条件付けとは、報酬や罰を通して、人や動物の自発的な行動を変化させる条件づけのこと。対象が行った行動に対してご褒美や罰などを与えると、望ましい行動を強化したり弱化したりできるという理論です。
提唱者は、新行動派という学問で有名なスキナーというアメリカの心理学者で、オペラント条件づけも「人や動物の行動に紐づく学習を説明する」という文脈から研究されています。
オペラント条件づけを検証した有名な実験
オペラント条件付けで有名なのは、箱にネズミやハトを入れた「スキナー箱」の実験です。
スキナー箱には、ネズミがレバーを押すと餌が出てくる仕掛けにしておきます。すると、その仕組みに気づいたネズミは自分からレバーを押す回数を増やすようになります。このように、報酬を通して設定した行動を増やすことを強化と言います。
一方、レバーを押した時に電気ショックが流れるなどの罰を用意しておくと、ネズミは自発的に「レバーを倒さない」という行動をとります。このように、罰を通して設定した行動を減らすことを弱化と言います。
【図解】オペラント条件づけを行う方法
オペラント条件付けを行う際は以下の表のように、与える刺激とその反応を定義したり、経過観察をしたりしましょう。
ここでいう強化とは狙った自発的な行動が増える変化、弱化とは避けたい行動が減る変化のことを指します。
また、好子(快刺激)とは狙った行動の頻度を増やす、対象にとって好ましい刺激のこと。逆に嫌子(不快刺激)とは、対象の望ましくない行動を減少させる刺激のことです。
刺激 | 好子(快刺激) | 嫌子(不快刺激) |
正の刺激出現 | ■正の強化 ご褒美(快刺激)で望ましい行動を増やす 例)餌がもらえるので、おすわりできる回数が増える |
■正の弱化/正の罰 罰(不快刺激)で望ましくない行動を減らす 例)叱られると、いうことを聞かない頻度が減る |
負の刺激出現 | ■負の弱化/負の罰 「ご褒美(快刺激)が減る」罰で望ましくない行動を減らす 例)餌を減らすと、いうことを聞かない頻度が減る |
■負の強化 罰(不快刺激)を受けないように、望ましい行動が増える 例)叱られたくないので、おすわりできる回数が増える |
このように、オペラント条件付けを導入する時は、好子(こうし)・嫌子(けんし)という対象に与える刺激と、強化(狙った行動が増える変化)・弱化(行動が減る変化)を意識しながら対象の自発的な行動を生み出すことが大切です。
類似の条件づけとの違い
オペラント条件づけには、よく混同される理論が2つあります。
・道具的条件づけ
・古典的条件づけ
オペラント条件づけと上の条件づけには、どのような違いがあるのでしょうか?以下から詳しく見ていきましょう。
道具的条件づけとの違い
オペラント条件づけと最も混同されやすいのは、心理学の理論の一種である「道具的条件づけ」。道具的条件づけはスキナー以前に提唱された理論で、オペラント条件づけの確立にも影響を与えています。
オペラント条件づけと道具的条件づけの大きな違いは「自発的な行動を生んでいるか、いないか」です。
道具的条件づけに関する1番有名な実験は、アメリカの心理学者エドワード・ソーンダイクが行った「猫の問題箱(ソーンダイクの問題箱)」。この実験では仕掛けを施した箱に猫などの動物を繰り返し入れて脱出までにかかる時間を計測し、知能を調べていました。その結果「動物は反応の結果によって行動を変える」学習能力があることが分かっています。
オペラント条件づけとはそもそも目的から違うことが分かりますが、加えてプロセス面での違いも見ていきましょう。
オペラント条件づけのプロセス
①簡単に出られないよう仕掛けを施した箱に猫を入れる
②前回よりも早く猫が箱から脱出する
③餌が出てくる
④前回よりも早く脱出しようと自発的に努力する
道具的条件づけのプロセス
①仕掛けを施した箱に猫を入れる
②猫が箱から出ようと試行錯誤する
③箱から出る
④次回以降、脱出までにかかる時間が大幅に短縮される
このように、学習によって特定の行動が強化されることを単に観測しているのが道具的条件づけ、ご褒美や罰を通して自発的な行動を生み出すのがオペラント条件づけだと区別できます。
古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)との違い
オペラント条件付けとよく混同される理論の1つに心理学の理論の1種である「古典的条件付け(レスポンデント条件づけ)」があります。
オペラント条件付けと古典的条件付けの大きな違いは「行動が生まれているか、いないか」です。
オペラント条件づけのプロセス
①行動を起こすきっかけを用意する(犬の前にベルを置く)
②対象が行動を起こす(犬がベルを鳴らす)
③餌が出てくる
④自発的にベルを鳴らす
古典的条件づけのプロセス
①ベルを鳴らしてから餌を与えるようにする
②ベルの音を聞いただけでヨダレが出るようになる
古典的条件づけは生理的な反応を別の反応と結びつける学習のこと。行動をコントロールできないという意味で、オペラント条件づけとは大きな違いがあります。
オペラント条件づけの活用方法
オペラント条件付けは人の自発的な行動を促進するための比較的実践的な理論なので、実生活にも活用できます。とはいえ、日常生活にどのように活かせるのか、イメージしにくい人も多いでしょう。ここからは、日常生活に使えるオペラント条件づけの活用方法を見ていきましょう。
筋トレを習慣にする
筋トレの習慣化にオペラント条件づけを活用する場合、最初に明確な数値目標を設定しましょう。オペラント条件づけでは「達成したらご褒美が出る」という手順を踏むので、達成できたのかを明確に判断できる指標が必要です。
例えばこのように、継続的に取り組むための現実的な数字と、ご褒美・罰を決めておくことで行動を強化できます。
①最終的な目標を決める(腹筋100回・スクワット100回)
②小目標を決める(初週は腹筋10回・スクワット10回、毎週5回ずつ増やす)
③行動目標を達成した時のご褒美を決める(お気に入りのプロテインを飲む)
④行動目標が達成できなかった場合の罰を決める(月のお小遣いを1,000円減らす)
歩きスマホをやめる
オペラント条件づけを活用して歩きスマホの習慣をなくしたい場合、数値目標で行動を強化することは難しいです。
また、そもそも歩きスマホは「スマホを見ると何か楽しいことがある」という強化刺激によって行動が強化されている状態なので「スマホを見てもご褒美がない」状態を作り出すことが効果的です。例えば、以下のような対策で歩きスマホを減らすことができます。
・歩行中はスマホ画面に警告画面が表示され操作できなくなる機能を利用する
・よく使うアプリはスクリーンモードなどで利用制限を設定する
オペラント条件づけを活用して、人の行動を変えてみませんか?
この記事では、オペラント条件づけの学習のメカニズムや道具的条件づけ・古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)など類似の条件づけとの違いを解説してきました。「人の考えや行動を変えることはできない」というのがまだ一般的な考え方ですが、このように、仕掛けやご褒美・罰などの刺激を与えることで人の行動はある程度変革できます。
企業や自治体の中でも、望ましい行動を増やしたいという方は多くいます。弊社ABFLYWorks株式会社では、行動経済学をはじめとした行動変革を個人事業主や企業さまに提供する事業を行っています。お話を伺った上で施策の方向性を提案させていただく無料カウンセリングも行っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
コメント